ヘルシンキ中央駅のカフェ

 ヘルシンキ中央駅構内には、大きなカフェがある。夜はちょっとしたカジノにもなる。朝8時頃出かけると、ホカホカの渦巻きパン(=当時私が勝手につけましたが、要するにプッラのことです)が食べられる。
 天井がとても高くて、広い空間だ。中央のカウンターにはショーケースがあって、色々な種類のパンやサンドウィッチ、お菓子にキッシュ、いつも「どれを食べようか」と迷ってしまう。
 ある朝、どうしてもホカホカの渦巻きパンを食べたくて、ホテルの朝食ビュッフェをパスして出かけた。

 朝も昼も夜も、ここは結構混んでいる。お目当てのホカホカ・ふわふわの焼きたて渦巻きパンを幸せ一杯の顔でほおばる私。斜め向かいに中東系の若い男3人がいる。
 そのうちの1人が近付いてきて、「少し話してもいいか?」と言う。断ってるのに勝手に向かいの席に座った。

 勝手に「自分はテヘランから来た留学生」と自己紹介した。何の返事もせず渦巻きパンをほおばっていた私。彼はそんな私を気にも留めず、あれこれしゃべっている。
 「これから授業があるんだ」と言ったかと思うと、「映画を見に行かないか?」と言ったり、「フットボールを見に行こう」と言ったり・・・わけがわからん奴だった。

 「どこのホテルに泊まってるの?部屋番号を教えてくれないか?色々と話がしたいんだ」と言い出した。更に「キミが泊まってるホテルは高い?日本円持ってきてるの?」などと言う。  「変な意味はないよ。ただ僕はキミと友達になりたいだけなんだ。部屋に行っても話をするだけ、何もしないから。」

 そもそも、「何もしないよ」と2人だけの空間を作ろうとする奴は、絶対何かする。これは男の常套手段とかじゃなくて、正直言って女である私だって『下心』があればそうする。(ぶっちゃけ、したことが多々ある)

 トビアスやニクラス(=『ヘルシンキ大のいい男』編参照)のように、公の場でいくらでもお話はできるのだ。まあ、彼らの場合は私に「そそられなかった」だけなんだろうけど、私的には、トビアスを部屋に引きずり込んでやろうかって感じだったからね。
 彼らは日本のことを色々聞いてはきたけど、決して部屋のこととか、日本円のこととか、一言も言わなかったし、自分の飲む分は自分で支払ってたし。

 あれだけのルックスで、ナンパ師だったら、上手いこと言って本当は貧乏なこの日本人女におごらせることだってできただろう。『排泄』だけなら部屋にも来ようと試みただろう。こういう微妙な部分がトビアスたちと初日の自称・フランス人フェリペやこのイラン人との違いで、後者たちはこちらの警戒心を逆に煽ることになるのだ。

 私もとっとと席を移動すればいいものを、目の前の食べ物に夢中なのと、店内で一番見晴らしのいい席で、食後のまったり感を味わうにはもってこいの場所だったので、どうにも移動する気にはなれなかったのだった。でも、この男はジャマ。うざったい。

 ってなわけで、逆ギレしてしまった。お得意の超ブロークン英語で、まくし立てた。「私はあんたと話すことは何もないし、映画も行きたくないし、フットボールも行きたくないし、まして友達にもなりたくない!!ホテルも安いところ(=これはウソですが)だし、日本円なんか持ってない!!」
 「でも・・・」と、唖然としながらも話を続けようとする彼の言葉を聞かずに、「ナケミーン(=
さようなら)」と言って仕方なくカフェを出たのだった。

 人のことを言える立場じゃないけれど、誰のナンパには乗って、誰のは乗らないか、誰と
軽いノリで楽しむか、楽しまないかは私が決める。
 『軽い』と言われても、気に入った人とは目一杯楽しみたいし、『お堅い』と言われても、気に入らない人は相手にしたくない。
 自分が気に入って、たとえばそのルックスに目がくらんでつまみ食いした(食われた?)相手のことで痛い目に遭っても、それは私が決めたことだから自分で尻拭いするからいいの。
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by gogofinland | 2005-01-23 16:10 | 1997 Finland