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ポルヴォー

 ヘルシンキからバスで1時間半ほど東部に、ポルヴォーというフィンランドで2番目に古い
街がある。
 緑の森に囲まれた真っ青な水面のポルヴォー川、それに面して立ち並ぶ赤い木造の建物。写真で見ただけで「行きたい」気持ちをそそられる場所だ。

 ヘルシンキのバスターミナルを出発すると、バスは市街を抜けて、そのうち白樺の林に囲まれた道路を延々ポルヴォーに向けて走っていく。時々その林の間には、『いかにも』な雰囲気の家が見えたり、車がビュンビュン走る道路の端を乗馬スタイルの北欧美女が馬に乗ってパカパカゆっくり移動してたりする。
 そんな景色を楽しみつつ、ポルヴォー川を渡ると、ヘルシンキやトゥルクとは違って、ものすごくシンプルというか、こぢんまりとした街中のバスターミナルに到着となる。

 ここは本当に外国の小さな町に来たんだなと思わせるような所だ。横道に入ったり、中心部の賑やかな場所を離れて、一面緑の草原のような場所にポツンポツンと建つ個人宅の辺りを歩いたり。住宅地だとあまり人が歩いていなかったりする。
 周囲を森に囲まれたちょっと広い芝生の川岸には、他に誰もいなくて、とても静かで、こういう所にムーミンとかミーとか、そういったトロールたちが出て来そうな気がした。
 とてものどかで、ポカポカのお日さま、深い緑の木々や草花、静かな川の流れるこの場所は、ゴザでも敷いて1日のんびりしたい気分の場所だ。

 私としては、ヘルシンキやトゥルクは都市的で元気よく闊歩する場所、ポルヴォーは目的を持たずにのんびりリラックスする場所、リゾート的な場所という感じかな。

 帰りのバスで、後ろの方の席に座った若い男は、どう見ても酔っ払い、多分アル中という感じの男だった。不精ヒゲを生やし、革ジャンにジーパン、少しクセのあるやや長めの栗色の髪、でも実は結構いい男だったりした。手には紙袋を持っている。中身は酒瓶。ウォッカか何かの瓶だろう。(袋の口から出てたし、たまに飲んでた)

 既に相当酔っているように見えた。何も起こらないといいな・・・と思いつつ、行きと同様、白樺林に囲まれた風景を眺めていた。男は時々何か1人でつぶやいていた。そして、バスが停留所に停まる毎に、1列ずつジグザグに席を前に移動してくる。

 ついに私の反対側の列に移動し、こちらを向いて座って(=横向きってこと)、酔っ払いらしい目でじ~っと見てる・・・ような気がしたので、チラッと様子を見たら目が合ってしまった。
 神経逆なでして、酒瓶で殴られたらどーしよう!?ちょっとビビッた。・・・が、男はにんまり
笑うだけ。これはこれで怖かったりするが、殴られるよりはマシ。でもここで笑い返すのはムリ。窓に向き直った。

 次の停留所で、今度は私の真後ろに来た。時々後ろから私の席の背もたれをコンコンと叩く。そして何かつぶやく。その繰り返し。とにかく「触らぬ神になんとか」ってやつで、バッグをたすきがけにして、上着を上からかけて抱きしめて、寝たふりをしてみた。
 しばらくその調子で停留所を過ぎ、いくつ目かで彼はヨロヨロと降りていった。っちゅ~わけで、別に大した事件は起こらずに済んだというわけだ。
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by gogofinland | 2005-01-23 16:15 | 1997 Finland

ヘルシンキ中央駅のカフェ

 ヘルシンキ中央駅構内には、大きなカフェがある。夜はちょっとしたカジノにもなる。朝8時頃出かけると、ホカホカの渦巻きパン(=当時私が勝手につけましたが、要するにプッラのことです)が食べられる。
 天井がとても高くて、広い空間だ。中央のカウンターにはショーケースがあって、色々な種類のパンやサンドウィッチ、お菓子にキッシュ、いつも「どれを食べようか」と迷ってしまう。
 ある朝、どうしてもホカホカの渦巻きパンを食べたくて、ホテルの朝食ビュッフェをパスして出かけた。

 朝も昼も夜も、ここは結構混んでいる。お目当てのホカホカ・ふわふわの焼きたて渦巻きパンを幸せ一杯の顔でほおばる私。斜め向かいに中東系の若い男3人がいる。
 そのうちの1人が近付いてきて、「少し話してもいいか?」と言う。断ってるのに勝手に向かいの席に座った。

 勝手に「自分はテヘランから来た留学生」と自己紹介した。何の返事もせず渦巻きパンをほおばっていた私。彼はそんな私を気にも留めず、あれこれしゃべっている。
 「これから授業があるんだ」と言ったかと思うと、「映画を見に行かないか?」と言ったり、「フットボールを見に行こう」と言ったり・・・わけがわからん奴だった。

 「どこのホテルに泊まってるの?部屋番号を教えてくれないか?色々と話がしたいんだ」と言い出した。更に「キミが泊まってるホテルは高い?日本円持ってきてるの?」などと言う。  「変な意味はないよ。ただ僕はキミと友達になりたいだけなんだ。部屋に行っても話をするだけ、何もしないから。」

 そもそも、「何もしないよ」と2人だけの空間を作ろうとする奴は、絶対何かする。これは男の常套手段とかじゃなくて、正直言って女である私だって『下心』があればそうする。(ぶっちゃけ、したことが多々ある)

 トビアスやニクラス(=『ヘルシンキ大のいい男』編参照)のように、公の場でいくらでもお話はできるのだ。まあ、彼らの場合は私に「そそられなかった」だけなんだろうけど、私的には、トビアスを部屋に引きずり込んでやろうかって感じだったからね。
 彼らは日本のことを色々聞いてはきたけど、決して部屋のこととか、日本円のこととか、一言も言わなかったし、自分の飲む分は自分で支払ってたし。

 あれだけのルックスで、ナンパ師だったら、上手いこと言って本当は貧乏なこの日本人女におごらせることだってできただろう。『排泄』だけなら部屋にも来ようと試みただろう。こういう微妙な部分がトビアスたちと初日の自称・フランス人フェリペやこのイラン人との違いで、後者たちはこちらの警戒心を逆に煽ることになるのだ。

 私もとっとと席を移動すればいいものを、目の前の食べ物に夢中なのと、店内で一番見晴らしのいい席で、食後のまったり感を味わうにはもってこいの場所だったので、どうにも移動する気にはなれなかったのだった。でも、この男はジャマ。うざったい。

 ってなわけで、逆ギレしてしまった。お得意の超ブロークン英語で、まくし立てた。「私はあんたと話すことは何もないし、映画も行きたくないし、フットボールも行きたくないし、まして友達にもなりたくない!!ホテルも安いところ(=これはウソですが)だし、日本円なんか持ってない!!」
 「でも・・・」と、唖然としながらも話を続けようとする彼の言葉を聞かずに、「ナケミーン(=
さようなら)」と言って仕方なくカフェを出たのだった。

 人のことを言える立場じゃないけれど、誰のナンパには乗って、誰のは乗らないか、誰と
軽いノリで楽しむか、楽しまないかは私が決める。
 『軽い』と言われても、気に入った人とは目一杯楽しみたいし、『お堅い』と言われても、気に入らない人は相手にしたくない。
 自分が気に入って、たとえばそのルックスに目がくらんでつまみ食いした(食われた?)相手のことで痛い目に遭っても、それは私が決めたことだから自分で尻拭いするからいいの。
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by gogofinland | 2005-01-23 16:10 | 1997 Finland

失われた旅日記

2004年1月18日記

 ふと気付いたら、このページの中味が空っぽ!!
 なんでじゃ~ぁぁ!?心当たりナシ・・・(;;)

 ・・・と、言うわけで、どんなことが書いてあったか、完全に思い出すことができないのですが、他の回から推察するに、以下のようなコトが書かれていたはずです。
 でも、書き直すの面倒だし、そんな大きな事件はなかったんで、このままコピペします。

1.トゥルク駅で、ヘルシンキ行きの急行にチケットを買い換えた

2.乗る前に、ホームでホームレスちっくなおじさんと話しをした。とても親切だった。おじさんはちょっとサンタさんちっくで、昔お仕事をしていた頃、日本に来たことがあって、「とてもきれいな国だった」と言っていた。

3.列車の座席が読めず、テキトーに座ってたら、次の駅で乗ってきた女性に「そこは私だと思うんだけど・・・」と言われ、チケットの読み方を教えてもらった。

4.ヘルシンキに到着すると、夕焼けがキレイだった。

 ・・・というような回でした。まったく・・・なんてこったい!!
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by gogofinland | 2005-01-23 16:04 | 1997 Finland

トゥルク日帰り散歩~その3

 トゥルク城から、アウラ川をひたすら東に向かって歩くと、大きなパイプオルガンで有名な大聖堂がある。パイプオルガン好きな私は、これ見たさに絶対トゥルクに行かねば!!と計画していたので、トゥルク城を後にして大聖堂に向かった。

 天気も良く、暖かいので、ちょっとしたお散歩がてらアウラ川沿いを歩いて行くことにした。
 地図で見る限りでは、大した距離ではなさそうに見えるが、実際歩き始めると結構遠い。途中、バス停などもあったが、バスに乗ってしまうと、その道のりにある興味深い風景がもったいないので、やっぱり徒歩が一番だ。

 夏場になるとレストランかカフェにでもなるんだろうなと思われる、バイキング船のようなものが停泊している。フィンランドはバイキングとは無関係なはずなのに、ちょっと不思議。確か、アニメ『小さなバイキング・ビッケ』はノルウェーバイキングの話だったと記憶している。

 ま、それはさておき、ティモ先生の予想が外れて、あったかくて天気がいいけど、やはり9月下旬、日曜日なのに川沿いにはオープンカフェなども出ていないし、人通りも少なくて、ちょっと寂しい感じだった。
 時々遊歩道から降りて、川岸間際の歩道に降りてみたり、そのまま転げ落ちそうな所に置いてあるベンチに腰掛けて、静かな川の流れを眺めてみたりして、小さな寄り道をしていると、かなり時間を食ってしまった。

 大聖堂がその姿を見せ始めて、すぐそこにありそうな感覚になったものの、行けども行けども、大聖堂にたどり着かない。東京タワーと同じで、大きいから、見える姿の割にはまだ遠くだったりするのだ。
 そのうち、空がどんどん曇り出し、今にも雨が降りそうなどんよりした空模様になってしまった。陽が翳ると、急に気温が下がった。てくてく歩いているので、寒いとは思わなかったけど、ベンチで座っていると寒く感じるようになった。

 なんとか大聖堂にたどり着いた。見上げると首が痛くなりそうなくらい大きい。静かな聖堂にそ~っと入ると、薄暗くぼんやりとした暖色の灯りの中、左右にずらりと座席が並んでいて、正面に大きな祭壇が見えた。誰もいない。

 これが結婚式なら、長距離バージンロードとなる道を祭壇に向かって歩いてみる。何か出そうなほどの静けさ。「パイプオルガンはどこにあるんだろう?」真ん中辺りで振り返ってみると、天井に向かってそびえ立つ、それはそれは立派なパイプオルガンが見えた。
 この時は演奏時間ではなかったので、(毎週ではないらしいが、日曜日の朝だと運がよければ聴けるらしい)音は聴けなかったが、見るだけでも感動的な姿だ。いつかトゥルクにも泊まって、日曜日の朝早く起きて、音色を聴いてみせるぞ~!!

 この旅の目的のひとつを果たし、なんだか満足な気分で大聖堂を出ると、ますます空は暗く重たくなっていた。風も強くなり、店の出ていないマーケット広場では、落ち葉がクルクル回っている。
 駅はもう目の前、駅前の公園に入ると同時に突然雨が降り出した。しかも、ポツっと来た?と思うやいなや、どしゃ降り。バケツをひっくり返したような・・・とはまさしくこのこと。慌てて折りたたみ傘を広げ、駅にダッシュしようとしたら、信号が変わってしまった。傘を突き破るのでは?というくらい物凄い勢いで雨が降る中の信号待ちは辛い。

 駅舎は結構な混雑で、カフェも混んでいる。寒くなったので、ホットコーヒーを買い、ベンチで座って飲んでいたが、半袖姿にアイスをかじっている人もチラホラ。フィンランドで何度となく見た光景。こっちは「やっぱり北欧の9月は寒いな~」なんて思ってるのに、半袖で平然と歩いてたり、公園でアイスをかじってる人がいっぱいいるんだもん。

 数列のベンチにはホームレスに近い雰囲気のおじさん集団(フィンランドにはホームレスというのはいないが)がいる。一人は相当酔っ払っていて、怒鳴り散らしている。怖い。
 傍に座っていた人たちがさりげなくそこから離れていき、ベンチはガラ空きなのに、立っている人で混雑している。私もちょっとズレてみたりした。
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by gogofinland | 2005-01-23 16:00 | 1997 Finland

トゥルク日帰り散歩~その2

 トゥルク。風は強いが快晴。
 まずはバス・ターミナルへ。ドライブ・インみたいに広い建物があって、そこにカフェとか、
ちょっとした観光案内なんかがある。
 一息お茶でも・・・のついでに、カフェの女性にトゥルク城行きのバス乗り場を聞いた。彼女は、「ごめんなさい。英語がしゃべれないので・・・」と言う。今だったら、バス乗り場程度ならフィンランド語で質問できるんだけど、当時はホントにそこまではムリだったので諦め、観光案内の女性に聞いてみた。

 すると、「外のバス停で○○番のバスを待つように」と言われた。快晴だったけど、バス停は屋根付きで日陰だったので、強風で凍えそうな寒さ。
 ヅラだったら絶対吹っ飛んでるはずの強風にビュンビュン吹かれながら、教えてもらった番号のバスを待つ。時刻表だと5分ほどで来るはずなのだが、来ない。

 数台のバスが連なってやってきた。番号を見ようとするが、1台ずつ探してるうちに、次々と発車してしまった。「ひえ~」っとあたふたしてる間に、もう1台後ろからバスが来た。見るとまさしく、その番号だ。「あ~、良かった・・・」と思ったのも束の間、降車客がいなかったのか、バスはそのまま素通りしてしまったではないか!!

 すっかり小心者になった私は、「どうしよう・・・次のバスまで待つのはイヤだしな~」と考え、そこでキラリ~ンとひらめいた。そうだ、タクシーに乗ってみよう!!
 フィンランドのタクシーって、私はベンツ様しか見たことがない。本当は色々あるのかもしれないんだけど、とにかく私はベンツ様のタクシーしか見たことがないのだ。で、貧乏人のささやかな旅の思い出として、「タクシーに乗ればベンツに乗れる・・・」という状況が少し嬉しかったのだ。

 バスのことなんかすっかり忘れて、心ウキウキ、タクシー乗り場に向かった。ちょうど1台客を降ろしたところのタクシーが停まっていた。てっきり日本と同じでドアは自動で開くもんだと思ってた私は、後部座席のドアの前でボケ~っと立っていた。しかし開かない。
 「乗車拒否!?」とオロオロしていると、ドライバーが中からドアを開けてくれた。手動だったのだ。

 フカフカの後部座席に座って、「トゥルク城までお願いします」と言ったが、どうにも私の発音が悪いらしく、何度も聞き返された。仕方がないので地図でトゥルク城を指差すと、若いお兄さんドライバーは「OK」と言って、車を走らせたのだった。
 結構なスピードで走るベンツ・タクシー。「これがベンツ様か・・・」たかがタクシーに浮かれる私。5分程度でベンツ様はトゥルク城へ到着した。料金もそんなに高くなかった。

 今度はちゃんと自分でドアを開け、そして閉め、ポカポカの日差しの中、お城の中に入ってみた。
 ハッキリ言って、一般的なイメージにあるようなお城ではない。写真で見てもわかるように、とっても小さな質素なお城だ。旧東欧とか中欧なんかで見かけるような、おとぎ話にでてくるようなお城ではない。もっと言えば、皇居の方が大きくて立派にお城っぽい感じがするくらいだ。
 それでも、キレイに整備された芝生の庭や、花いっぱいの花壇、いかつい雰囲気の中庭を見ていると、小さいけれど偉い人が住む場所という感じがした。何かから守られるような感じ。

 ひと通りお城をぐるっと周って、トゥルク訪問の一番の目的、大聖堂の名物・パイプオルガンにご対面するべく、アウラ川沿いを延々歩いた。後で地図で見ると2~3kmくらいあったらしい。
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by gogofinland | 2005-01-23 15:57 | 1997 Finland

トゥルク日帰り散歩~その1

 日曜日。トゥルクへお出かけすることにした。
 トゥルクはヘルシンキから電車で約2時間のところにある、19世紀初頭まで首都だった町だ。スウェーデン語表記では、『オーボ』という地名だ。お城もある。

 ティモ先生オススメの地だし、元々今回の旅行に組み込むつもりだったので、駅で切符を
買う時のフィンランド語を教えてもらっていた。
 ヘルシンキ中央駅。ドキドキしながらフィンランド語で切符購入にチャレンジ。

 なんだか部分的に聴き取りにくいらしく、切符売り場のお兄さんが聞き返してきたが、その
質問がわからなくて焦った。とっさにティモ先生に聞いて書いておいたメモを見せて、例文が
ポルヴォー行きになっていたので、そこを指で隠して「トゥルク!!」と叫んだ私。
 お兄さんは笑いながら、「OK。わかった。フィンランド語で勉強してきたんだね。誰に習って
るの?」と言った。私が「東京でティモっていう人が私の先生なんです」と答えると(ティモなんてたくさんいるから、どーでもいいことなんだけど)、「英語で説明しようか?フィンランド語がいい?」と言う。「英語でお願いします・・・(苦笑)」と私が言うと、「OK」と言った。

 お兄さんは、往復乗車券を発券して、手渡しながら窓口から乗り出して発着掲示板を指差し、「○番ホーム・トゥルク行きって書いてある○時○分の電車だよ。○番ホームは真ん中のドアから出たら正面だから、一番近いよ。右から○番目に停まっている電車だからね。楽しんできて!!」と丁寧に教えてくれたのだった。

 お兄さんが教えてくれた通り、重くて大きな扉を開けてホームに出ると、電車が数台停まっていて、ちょうど1台は発車するところだった。電車というより、日本の鉄道で言うと長距離列車みたいな感じ。多分これだろうと思いつつも、念のためホームにいた駅員さんに「トゥルク行きはこれですか?」と聞くと、そうだと言う。

 後ろからず~っと各車輌を見ながら前に進むと、食堂車や禁煙車輌、喫煙車輌、喫煙&ペット可車輌があった。
 喫煙&ペット可車輌というのが一番珍しかったので、そこに乗ることにした。足の短い日本人にはちょい厳しい段差の大きなデッキの階段を登って車内に入ると、大きな茶色い犬を連れたおばあさんと、これまた大きな黒い犬を連れたおばさんが既に座っていた。2匹ともとてもおとなしい。

 喫煙車輌と言っても、座席で吸えるわけではなく、車輌内に小さなガラス貼りの喫煙室があるだけだ。この喫煙室、換気はあまりよくないので、数人でタバコを1本ずつ吸うと霧の中になってしまう。

 電車は静かにヘルシンキ中央駅を出発し、エスポーやサロを通ってトゥルクへ向かう。途中の車窓からの景色は、賑やかな都会の景色から「いかにも」フィンランドちっくな、豊かな森の緑と湖の風景に変わる。
 確かエスポー辺りだったと思うが、ホームの脇に蒸気機関車が展示されていたりして、約2時間の道のりはなかなか楽しい。
 犬くんたちは、通路を人が歩いても、人間には興味がないかのようにおとなしく座っている。お互いにケンカするでもなく、まったく吠えない。本当にいい子たちだ。

 そして電車はちょうどお昼頃、快晴・強風のトゥルクに到着した。
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by gogofinland | 2005-01-23 15:52 | 1997 Finland

ヘルシンキ大のいい男~その7

 あーだこーだと、超ブロークン英語を駆使して会話は進み・・・ふと二クラスが「ところで、今何時?」と言った。トビアスが時計を見て「ちょうど1時を過ぎたところ」と言うと、「ゴメン。今日は朝3時に起きて、テレビ局でのバイトがあるんだ。帰らなくちゃ。」と二クラス。
 「え?3時に起きるの!?あとちょっとしか寝れないじゃん。ごめんね、こんな遅くまで付き合わせちゃって・・・」と私が言うと、二クラスは「大丈夫だよ。1時間半は寝れる。」と笑った。

 2人が席を立ち、帰り支度を終えると、まず二クラスが右手を差し出し、「今日は本当に楽しかったよ。バイトがなかったらもっと話したかったんだけど・・・色々と日本のこと教えてくれてありがとう。旅行、楽しんでね。おやすみ。」と言った。
 次にトビアスとも握手をした。トビアスは「もっとたくさん話を聞きたかったな~。フィンランド語の勉強、頑張ってね。早くこっちの大学に来てね。待ってるから。会えて本当に良かったよ。」と言った。

 2人を見送って、再び席に着いた私。あ~、楽しかったな~。2人が「出会った記念に・・・」と
書いてくれたメッセージを読みながら、数時間の会話を頭の中で最初から思い出してみた。とっても楽しかった。2人ともいい男だった。

 ・・・!?そこで私は最大の失敗に気付いたのだった。・・・そう。写真も住所も、な~んにも
残ってない。寝る前に一杯ひっかけるつもりで、雑誌と財布と単語機と旅日記しか持ってきて
なかった。カメラなど、バーで使うはずがないと部屋に置いてきてたから。
 住所を聞くのを忘れていた。メル友にでもなればよかったのに。(当時はパソコンなんか持ってなかったから、ペンパルってやつか)
 思わず「バカ、バカ、バ~カ!!」と、テーブルの角に頭をガンガンぶつけたい気分だった。

 私に残されたものは、彼らからのメッセージと当日、部屋に戻ってから興奮冷めやらぬまま書いた旅日記と頭の中に残る思い出だけ。
 形として残るものが少ないと、普段物覚えが悪いにも関わらず、その記憶力たるや物凄い底力を出すものである。未だに私の中にはキッチリ&クッキリ残っている。もちろん、メッセージは帰国後すぐにパウチして残してある。

 帰国後、ティモ先生に数々のお土産話をしたら、「大学に問い合わせてみれば?」と言われた。大学宛に、彼らについて知っている情報すべてといつ、どこで会ったか、そして連絡を取りたいという旨を書いて送れば、学内掲示板のようなところに出してくれるという。そして、もしそれを彼らや彼らの友達が見つけて、連絡を取る気があれば(ここがクセモノだわ)連絡が来るはずだと。

 ティモ先生が、フィンランド語で問い合わせ用の文章を書いてくれた。それを清書して送ってみろと言う。その日レッスンを終えて帰宅し、すぐに清書した私。
 ・・・でも・・・結局その手紙は出せず終いのままだ。なんだかこのままいい思い出としておいた方がいいのかも・・・という思いが度々よぎったからだ。もし、彼らが返事をくれなかったら?もし、彼らが本当は学生じゃなかったら?(そんな悪党には見えなかったけどね、どう見ても)もしかしたら、迷惑かもしれないし・・・

 あれから5年経った今も、私の部屋のとある引き出しには、2人からのメッセージと、問い合わせ手紙が大事にしまってある。時々凹みそうになると、2人のメッセージを見ることもある。

 多分2人とももう卒業してるだろう。フィンランドも例にもれず卒業するのが大変らしく、4年間で卒業できる人の方が少ないくらいだと聞いたけど、当時3年生くらいだったから、いくらなんでも卒業できてるはず。
 二クラスは希望通り、テレビ局に就職できたんだろうか?トビアスはその後、フィンランド語で彼女とケンカできるようになったんだろうか?

 2001年9月、同じバーで3人が会話してたテーブルを眺めながら、また偶然どこかで・・・があるかもしれないね、と思った私であった。
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by gogofinland | 2005-01-23 15:49 | 1997 Finland

ヘルシンキ大のいい男~その6

 ティモ先生オススメのレストラン、『LAPPI(ラッピ)』を、到着初日から探している私。地図を書いてもらうのを忘れていたので、ガイドブックで見たのだが見つからなかった。
 近隣を歩き回っても、それらしき看板が見当たらず、通りすがりの若いおねーちゃんたちに「Do you know Lappi ?」とか、「Would you tellme the way to Lappi ?」なんて聞いたのだが、いつも首を横に振られるだけだった。

 で、2人に試しに聞いてみたら、2人とも「知ってるよ」と言う。そしてニクラスがノートに何やら書き始めたので、「あ、地図書いてくれるんだ」と思って見ていた。
 ところが書いている地図がおかしい。道とか建物の地図じゃなくて、なんかぐにゃぐにゃのものを書いてる。不思議に思いつつ見ていると、私の方にノートを向け、上の方に点を書いて言った。「この辺だよ。Lappiっていうのは、フィンランドの北部のことだよ。」

 ・・・いや、そうじゃなくて・・・それはラップランド地方のことじゃないかい?確かにラップランド地方のことをラッピと呼ぶんだけど、私が聞いてるのはレストランで・・・と思ったところで気がついた。
 私は「『ラッピ』というレストランを探している」という言い方をしなくてはいけなかったのだ。道行くおねーちゃんたちが、首を横に振りながら変な顔したのはこれが原因だ。そりゃそーだ。ヘルシンキのど真ん中、ファッションビルやらオフィスビルの周辺で、いきなり「ラップランドへはどう行ったらいいですか?」とか、「ラップランドを知ってますか?」なんて聞かれたら、「何?この人?」と思われるのは当然だ。

 二クラスに「そーじゃなくて、レストランのラッピがどこにあるか知りたいの」と説明すると、二クラスもトビアスも「レストラン?知らないな~・・・」と言う。ティモ先生いわく、『サラリーマンに人気の店』とのことだったし、二クラスたちはスウェーデン系で学生なので、行く機会がないのかもしれない。

 ちなみにこのレストラン、ガイドブックによると『白樺の樹液が飲める』とあったが、ティモ先生は「え?そんなもの飲めるの?あの店で?知らなかったな~。というより、そんなの美味しいのかな~?」と言っていた。・・・ちょっと、ガイドブックってどうなってるのよ!?もう、鵜呑みはしないことにした!!

 私がフィンランド語の勉強をしていることについて、トビアスが話題をふってきた。「実は僕の彼女はフィンランド人なんだけど、(ちっ、彼女持ちかよ←心のつぶやき)何しゃべってるか、わかんないことが多くて・・・フィンランド語って難しいと思わない?」
 「難しいよね~。特に『R』の発音なんか全然ダメ。できないもん」と私。すると、トビアスが「大抵は英語でしゃべってて、簡単なフィンランド語をゆっくりだったらわかるんだけど、ケンカしたりすると、彼女がフィンランド語で物凄いスピードでしゃべるから、さっぱりわからなんだよね。ま、わかんないからとぼけたり、『何言ってるかわかんないよ』って言ったりしてるんだけどね。」と笑った。

 おいおい、すっとぼけるなんて、悪い奴。私が「でもさ、『何言ってるかわかんない』なんて言ったら、彼女余計に怒るんじゃないの?」と聞くと、「そうするとますます何言ってるかわかんないから・・・あ~、なんか怒ってるみたい・・・って思うだけ」と更に大笑い。
 二クラスは「やれやれ」という感じのジェスチャーをしながら私に目配せをした。
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by gogofinland | 2005-01-23 15:45 | 1997 Finland

ヘルシンキ大のいい男~その5

 二クラスと私がファミリアとか富士山の話をしている間、珍しくおとなしかったトビアスだったが、私たちの話がひと段落したところで、私にこういった。

 「『トビアス』って日本語で書いて」私はノートにカタカナで「ト・ビ・ア・ス」とゆっくり一文字ずつ書いて見せた。するとトビアスは「どれが『ト』?」と聞く。私はまた一文字ずつ「これが『ト』で、これが『ビ』で・・・」と説明した。

 文字がわかると、トビアスは「ふ~ん。じゃあ、今度からこれで僕の名前書こうっと。日本人に書いて見せたら驚くかな~?」とニコニコだった。さらに「じゃあ、ニクラスはどう書くの?」と言うので、今度は二クラスの名前をカタカナで書いて見せた。
 すると「あ!!これ僕のと一緒だ!!」と、『ス』の文字を指さした。そして、「なるほど」という顔をしてノートを覗き込んでいた二クラスに向かって、まるで「俺が発見したんだぜ」くらいの自慢顔で「ほら、これとこれ。『ス』って読むんだよ」と教えている。なんだかかわいいな~。

 2人とも日本には漢字・ひらがな・カタカナがあることは知っていて、今度はひらがなで書いてくれという。リクエストにお応えしてひらがなで書きつつ、「次は漢字で・・・なんて言うんじゃないだろうね?当て字を考えなくちゃ・・・」と、頭の中で良さそうな漢字を探してみた。
 結局、名前を漢字でというのは頼まれなかったので助かった。まさか二クラスに『肉』とか『似・句』なんていうのも変だし、トビアスなんてどうすりゃいいの?『飛』という字しか浮かばなかったもん。

 二クラスが「ねえ、雪って漢字でどう書くの?」と聞いてきた。またノートに書くと、雪という文字の『雨』の点々を見て、二クラスが「なんだか本当に雪が降ってるみたい!!」と喜んだ。

 そして二クラスが「漢字とひらがなとカタカナって、どういう風に使い分けるものなの?」と質問してきた。ちょっと奥が深い質問だわ・・・と思いつつ、学問的に正しいかどうかは別として、私が今まで聞き、信じてきた区別方法を話してみた。(たとえば、漢字は中国から入ってきたとか、それを崩してひらがなができたとか、さらに崩してカタカナになったとか、カタカナは特に外来語や外人の名前に使うとか・・・そんな感じ)
 2人は「へ~、そうなんだ~ぁ。3種類もあると覚えるの大変だよね~。」と感心しきり。本当にこんな説明していいのか?とちょっと良心が痛んだ。

 トビアスは「じゃあ、僕が名前を書く時にはカタカナを使わないとね!!」と言い、「あと、うちのバンドの名前も書いて!!今度、ライブのビラにカタカナで書いてみたい!!きっとみんなびっくりするだろうな~。」と満面の笑みだった。

 この2人に限らず、2代目フィンランド語の先生であるマルヨなんかもそうだったんだけど、漢字を文字としてではなく、『絵』か『図』のようにとらえる人がいる。文字や文章を書く時の「書く」はwriteだと思うが、私の知ってる外人や海外留学経験のある友人の知り合いの外人などは皆「描く」つまりdrawを使う。そして「この漢字、『可愛い』」などと評する。

 確かに漢字って、絵やそのものの様子から作られたりしているんだろうけど、私たちが普段、これを完全に文字としてとらえ、絵や図とは異なるものとしているのに対して、彼らにはまだまだ絵や図にみえるようだ。
 マルヨ先生なんて、私の名前の漢字を毎回見る度に「この字、好き!!だってかわいいんだもん!!」と言って、ある日「私も自分の名前を漢字にしてきた。」と、私のノートに『○代』と図と漢字ごちゃまぜで描いてみせた。(この場合は『描く』だと思う)

 毎度のことながら、話がそれてしまったが、その後トビアスは何度も自分の名前のカタカナを一文字ずつ指差して「ト・ビ・ア・ス」と読んでは「合ってる?」と聞いてくるのだった。
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by gogofinland | 2005-01-23 15:41 | 1997 Finland

ヘルシンキ大のいい男~その4

 トビアスはニクラスに比べて、日本にとても興味を持っているらしく、色々と聞いてくる。
 なんでも、トビアスの友達とやらが北海道旅行の際に、現地の人にとても親切にしてもらったそうで、トビアスの中では『日本人=いい人』のイメージが強いのだそうだ。もちろん、悪い人もいっぱいいるけどさ。
 あんまり自慢できない国かもしれないんだけど(色々な意味で)、やっぱり誉められたり、他の国の人が興味を示してくれると、悪い気はしないものだ。

 トビアスは「僕のお父さん、ニッサンの車に乗ってるんだよ!!」と、『どーだい、エッヘン』ってな勢いで話した。・・・しかしまあ、私が日本人だとわかると、街中や空港で知り合う外は、大抵、自動車の話をする。ニッサン・トヨタにホンダ・・・・なんでだろうね?不思議に思うと同時に、日本には車しか取り柄がないのか?と思えてくる。

 トビアスの話に、二クラスが乗ってきた。日本にもあるような、中古車売買情報誌らしきものを取り出し、「この車が欲しいんだけど、高いんだよね~。」と私に言う。見るとマツダのファミリア。私はあまり車って詳しくないんだけど、ツードアにハッチバックっていうのかしら?あれが付いてるやつだった。二クラスはマツダのファンらしい。

 値段を見て私はぶっ飛んだ。中古で200万円くらいするのだ。電卓でもう一度計算し直し、二クラスと2人オデコを突き合わせて「いち・じゅう・ひゃく・・・・」と、ケタを数える。やっぱり何をどうしても200万円だ。
 ニクラスは「これに車輌価格と同額の税金がかかるんだよ・・・」と言う。ますます私はビックリした。たかがファミリア(私もあのタイプのファミリアは好きなんだけど)に、しかも中古に、400万円も払うなんてできない!!

 私の驚き具合に、二クラスが「これ、日本で新車で買うといくらくらい?」と聞いてきた。「あまり車に詳しくないけど、200万もしないと思うよ。」と答えると、「いいな~・・・」かなり羨ましげな目をする。
 「でも」と、二クラスが続ける。「税金は?」「車輌価格と同額なんてことはあり得ないよ。」と私。二クラスは「僕も日本に行きたくなった!!日本でこの車買う!!」と、笑った。
 トビアスに比べて、落ち着いたオトナの雰囲気いっぱいの二クラスも、この話題では「あ~、やっぱりトビアスと同年代なのね」というところがチラっと見えた。そしてこの話題をきっかけに、二クラスは「富士山」について聞いてきた。

 「富士山って、夏でも雪があるの?」と二クラス。「う~ん、頂上近くには残ってるんじゃないかな。行ったことないけど。」と私が言うと、「わ~、いいな~。日本人は夏でもスキーができるんだね!!」と、スキー好きの二クラスは1人エキサイトした。
 私が「いや~、富士山でスキーはムリだと思うよ~。頂上付近なんて、ますますムリだと思うんだけど・・・」とそのエキサイトぶりを私が静めようとすると、二クラスは「もったいないな~。せっかく雪があるのに・・・」と残念がった。
 思うに、富士山の頂上でスキーなんてスゴイ景観かもしれないけど、空気は薄いし、ゴツゴツしてそうで、死にに行くようなもんじゃないか?フィンランドはあまり高低差の無い土地なので、高い山というのが興味深いらしい。

 まあ、日本人だって、フィンランドをはじめとした北欧っていうと、イメージとして年中寒くて、雪があって、オーロラが見えて、夏はどの地域でも白夜・・・という間違ったものを持っているので、お互い様か。

 二クラスと私のこの会話の間、珍しくマシンガン・トークがストップしていておとなしかったトビアスであった。
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by gogofinland | 2005-01-23 15:37 | 1997 Finland